紺’s blog

星の瞬きがまぶしすぎて。

カレンダーを手元にお読みください。

(side-B-23)
あのさぁ、ほんとに帰れると思ってんの。

ただの、きまぐれだと思っていた。彼はいつだって飄々としていて私に興味を持っていない。私に彼氏がいようが何だろうが関係なくてただ、自分が必要な時に必要な分だけ求めていく。そんな彼についに私が結婚をすると告げたホテルからの帰り道、気付いたら彼の家にいた。初めて入った彼のテリトリーでただ何をするでもなく無言が続いた夕暮れ時。帰るね、と一言零した私に対して放たれた言葉はあまりにも感情が読み取れないものだった。帰れないのかな、そうぼんやりと思って思考をやめた。

(side-B-12)
シャワー、浴びるけどどうする?

目の前でおもむろに服を脱ぎ出した彼はこちらをちらりとも見ずそう言い放った。その横顔があまりにも綺麗だから吸い取られるように近付いて捕らわれて服は地面に散らばっていた。

(side-A-21)
別にいいんじゃない、それでお前が幸せなら。

慣れた手付きで自宅のシャワーを捻りながら彼はやはり興味なさそうにしかしどこか一点を見つめながらぽつりと言葉を落とした。一瞬何の事かと思ったが帰り道、結婚するんだと告げた私への答えだった。本当の幸せって、なんだろう。

(side-A-06)
いつもなら服なんか着ないままなのに、彼は大きめのバスローブで私を包んでくれた。髪をタオルでふいている彼もまた色違いに身を包んでいて、そして少し優しい顔をしていた。やめようかな、と少し揺らいだ私の言葉に、ん?とこちらを見た眼差しはやっぱり優しくて知らない顔。繋ぐ言葉が見つからず揺らぐ瞳の私にタオルを被せそのままベッドへと誘い、夜がはじまった。

(side-B-06)
朝目が覚めた時、隣りにはすでに温もりがなくて少し離れたテーブルに腰掛けた彼を見つけた。目覚めた私には気づかないままカップを傾ける様はあまりにも美しかった。このままずっと見続けられたらいいのにな、と思うこの気持ちにはまだ名前を付けられない。しかしこう足掻いていられるのも時間の問題だと悟った。

(side-B-26)
ぎし、とベッドが鳴いた時には彼がこちらを向いて頬をついていた。なに、と少し詰まる声で聞いた私に彼は別に、と返す。ぼんやりと見つめられながら聴きたくもない心臓の音が響く。また、来れば。心臓の音に混じり聴こえた声の感情は読み取れなくて、返す言葉が見付からない。ふとプロポーズしてくれた彼のねこひげ笑顔が頭をよぎる。彼の優しさにつけ込み裏切り続けた私の、卒業というけじめは見送られそうだ。



なんて、ね。カレンダー最高!