紺’s blog

星の瞬きがまぶしすぎて。

後ろに添えられた手。

舞台「ファウスト」11日昼公演に行ってきた。ずっと楽しみにしていたこの舞台。とりあえず思ったことを書き連ねる。

まず再演、ということだが私は去年の初演を観ていない。ちょうど仕事が忙しく、さらに言えば戸塚祥太の舞台「出発」を旅行を兼ねて観劇することに決めていたので出費が惜しかった。みんなの感想や雑誌を見て後悔したことは言うまでもない。あのときいくら出費してもそのときしか見れない舞台がいかに尊いかを忘れていた自分を叱りたい。なので一年越しの待ちに待ったファウスト。比較対象がないため、去年観た方とは違う感想になることを冒頭に伝えておく。

幕が上がり、まず圧倒されたメフィストを演じる三田さんの迫力。ものすごい存在感にこれが大女優か…とどうでもいいことを考えていた。喋り方もいつものフワフワした優しさはなく本当にこの人あの三田佳子?と思った。すごい。さて、そのメフィストは人間に恐れられ人間を嫌う悪魔。メフィストが神と勝負をすることでファウストの運命が変わるわけだがここが原作を読んでいないためちょっと理解しづらかった。神とメフィストの関係性と後に出てくる妖怪や魔法使い、天使との相関図がほしい。天使と悪魔はどこにいるのだろう。同じ場所に共存してるのだろうか。天使たちがメフィストファウストを救ってくれと頼みに行けるぐらいだから…まぁ下界に落とされるわけだが。色々考えたがまぁいい。そして囚われ死の直前にいるファウスト。美青年になる前のビジュアルが去年と変わったのはなぜなのだろう。ツイッターでも書いてあったが完全にラモス。ラモス瑠偉がいる。悲痛なシーンだけどちょっと面白い。というより初登場シーンが美しくないのが新鮮。どんな舞台でも目当てのキャストが初登場した時はキタ!と目が奪われるのに何なのだろうこの気持ち。そんなファウストメフィストに救われ舞台が本格的に始まる。

まず見た目を変えるため魔女リリスのとこへ。ここで二人が時空を越える映像がなんとも言えなくて……リリスも映像の二人と話すのだがちょっと違和感。映像の必要はあったのだろうか…まぁよい。美しくなったファウスト。待ってたよそのビジュアル!短髪にお衣装が栄えていてまさしく美青年。細身の河合くんはあの手の王子衣装がよく似合う。そして鏡を見てにやけながら例の台詞。会場も笑いに包まれちょっと和んだ。さて、そしていよいよオフィストの登場。メフィストの生成の舞にあ、ここは映像使わないんだ…とちょっと思っていたらお呼びでしょうかメフィスト様、と颯爽とお出ますオフィスト。美しい。去年たくさんの方々がオフィストに心奪われたのは知っていたが私もまんまと心奪われた。まず身のこなしがスマート過ぎる上淡々と話す声のトーンも素晴らしい。メフィストファウストを任され「御意」と言った瞬間もうだめだと思った。御意って。好き。

そしてマルガレーテのシーン。マルガレーテはガブリエルといつから知り合いなのだろう…まぁいい。ファウストと出会うことを夢見るマルガレーテはかわいい。あとさすがの歌の上手さ。圧倒的。兄さまはあからさまにマルガレーテのことが好きなわけで父である王様的には兄さんが妹のために開いたパーティーの体、だが兄さま的にはガチ心配な感じも良い。美しい兄妹、万歳。

そしてそのパーティーへと忍び込むファウストとオフィスト。ここで目新しいキラキラした世界にわくわくを隠せないファウストがかわいすぎる。キョロキョロしながら見よう見まねで手を動かす姿にだれもがキュンときたはず。上手側、万歳。ここでオフィストはどんな様子だったのだろう…私はとりあえず目の前のファウストきゅんに夢中だった。そしてそのままみんなで踊り始めるのだがここからは完全にオフィスト様のターン。あの髪をなびかせながら踊る姿は何にも勝てない。私個人的には河合くっ、ごせっ、か、オフィスト様ーーーーっ!てな感じで完全にキャパオーバーしてた。落ち着け。そしてついにファウストとマルガレーテが出会う。メフィストからハインリヒと名前を貰ったはずだがあっさりファウストと認めるのはどうなんだとも思ったが…ハインリヒ・ファウストなのか?まぁいいが…。あっさり恋に落ちたファウスト。オフィストの飽きれ顔がとても良い。メフィストを使いマルガレーテとのひとときを得る。マルガレーテに手を添えて踊る姿、かっこよかったよ河合くん。

そして一幕でもっとも私が興奮したシーンへと移る。オフィスト様がアマルを呼びとめるシーン。お嬢様、とアマルに対してお世辞を使うオフィスト様にまずひっ!となった。お嬢様って…私も言われたい…落ち着け。そしてあらイケメン!と誉められても知ってますとさらりと返すオフィスト様にぎゃっ!となった。知ってます…そういう見目を最大限利用してそうな感じ大好きだ。そして最後これを、とスッとラナンキュラスを差し出すのだがここで私は昇天しかけた。隣にいた友人に一幕終わりにすぐ「紺ちゃん、あのシーンでハンカチぎゅって握りしめて面白かった」と言われたほどだ。ちなみにこのシーンのせいで休憩時間オフィスト様…としか言わないオフィスト様botに成り下がった。我ながら気持ち悪い。さて、スッと私に(アマルに)ラナンキュラスを差し出してくれたオフィスト様だったがこれはファウストからでマルガレーテへだった。なーんだ。完全にアマルの気持ちになりながら落胆した。

無事ラナンキュラスを受け取り喜ぶマルガレーテのもとへファウストが会いに来てくれたのも束の間、この直前にメフィストの命令でリリスによってラモスと美青年が同一人物だとばらされてるため大蔵大臣(オークラン大臣)はすぐさまマルガレーテ大好き野郎(兄さま)をそそのかし、ファウストを捕らえる。大臣は魔女の言うことを本当に信じたのだろうか。とにかく展開が早くてファウストとマルガレーテにもう少し時間くれや!と思った。まだ、出会って間もなすぎる。致し方ないとはいえ、ちょっと二人の愛の重さが足りない気がした。

で、ヘレネを倒しにいくわけだが盗賊に遭遇して逃げ惑うファウストがひたすらかわいい。どうにかしてくれよぅ!かわいい。そのままオフィストに俺の動きを真似しろ、と言われよくわからないまま盗賊を翻弄するファウストかわいい。なにこれすごい!って剣を振り回す。かわいい。無事動きを封じオフィストに耳打ちされ家来に誘う。耳打ちのシーンはひたすらかわいくて河合くんちゃんとしなさい!ってなった。かわいい。

そして、ヘレネ来襲。あまりに妖艶すぎて私は言葉を失った。なんて迫力でなんて美しさなんだろう。女装、というのを感じさせない見目でまさしく吸い取られそうな勢い。私はこの舞台でもっともこのヘレネに惹き付けられたと言っても過言ではない。踊りながらファウストを誘惑するのだがもうついていくしかないとすら思う。ここのファウストヘレネに魅了され顔がとろけていた。ファウストの中でも河合くんの演技力が光る瞬間だと私は思う。そしてヘレネに打ち勝つためこの舞台最大の売りであるファウストの女性化がやってくる。私個人的な意見としては女性化の必要性を感じなかった。未来の覚悟を決めるのに性転換を使うのが果たして解りやすい演出だったのだろうか…女性化し実にあっさりしたファウストに少し拍子抜けした。更に言えばヘレネが圧倒的に美し過ぎてファウスト姫が霞む。霞むどころかやはり比較してしまうのでなんとも言えない。が、河合くんもキレイだった。紫のドレスも良かった。

ヘレネを倒すものの女性化して未来の覚悟を決めたファウストは戻らない。ここらへんから顕著にオフィストがファウストに対して情を見せる。そして私が再びハンカチを握りしめるシーンへと移る。女性のまま剣を稽古するファウストとそれに付き合うオフィスト。ここの片手を背に添え剣を振るオフィストのかっこよさがもうなんとも言えない。ファウストへの眼差しも優しく全てが完璧だった。よくぞここまで精進なされた、と素直に誉めるオフィスト。オフィストはメフィストの分身。すなわちメフィストもすでにファウストに惹かれはじめているということ。人間ごときがそれぞれの運命を変えはじめている象徴な気がした。

みんなの後押しもあり男へ戻り国へ向かうファウスト。すでに崩壊している国は国王がマルガレーテ大好き野郎に変わり大蔵大臣が手綱を引いている状態へと様変わりしていた。さらに元国王がヘレネの力を得てひっかき回すというひっちゃかめっちゃか。そこへ到着する一向は戦いに挑む。殺陣のシーンは素晴らしく、やはりオフィスト様の戦い様は美しく目を奪われた。バク転も実に可憐である。ここからクライマックスへ怒涛の展開を見せるのだがオフィストの最期について語りたい。オフィストとガブリエルの関係性が最後までよくわからなかったのだがあれはお互いを意識していたのだろうか。主であるメフィストの許しを乞い、人間の愛のために静寂を求め死にゆく姿があまりにも悲しくて涙が止まらなかった。ファウストを想い、その最期を彼とマルガレーテとの愛のために捧げたオフィストはきっと満足した人生だったはず。

全てを失い、引き換えに王となったファウストの表情は冴えない。ここの河合くんもとても良い表情だった。そして本当のラストへ。壊れたマルガレーテに届かないファウストの声は悲痛で痛々しい。マルガレーテを追いかけるファウストを止めるメフィストは彼へのこだわりを露にし、まだまだ続くはずの未来を夢見ていて、しかしその未来がないことも見えていて切ない。河合くんは本当に本当にたくさんの表情を魅せていて素晴らしかった。最後全員で歌い、長い長い公演は終了した。

見終わって落ち着けばたくさんの疑問は確かにある。今書いたシーン以外にもちょっと解りづらい展開があるのは確かだ。しかし演者さんの造り上げたあの舞台は素晴らしく私は大変に満足した。観に行く価値というのは人それぞれだが、行ってみなければわからないこともある。どうやらチケットはまだ取りやすい状態にあるらしい。あんなに素晴らしい演者のみなさんの悲しい顔は見たくないので1枚でも多く売れますように。

私はと言えばあと一公演入る。前から二列目センターというかつてない席で。オフィスト様に本格的にやられ、次の記事をかく時には青の洋服が増えていないようにみなさんも祈っててほしい。