紺’s blog

星の瞬きがまぶしすぎて。

昨日の自分を殴りたい。

「広島に原爆を落とす日」東京公演二日目昼の部。

なんで私は明日も見に行けないんだろう。今はその言葉しか出てこない。

昨日の今日でやっと内容の理解が追い付いた。そして一気に溢れ出す感情とひとつひとつの表情に意味がある戸塚祥太があまりにも素晴らしくて涙がとまらなかった。

なんて愛しくてなんて卑怯でなんて美しいのだろう、ディープ山崎は。

あんな長台詞を台詞と思わせない感情の乗せかたが出来、あんなにスポットライトを浴びて輝く人がいるのだろうか。ファンの目線、ファン目線だけどあの輝きはあの瞬間誰もが釘付けになったに違いないと思う。あれこそスターだと思った。

もう何をいっても言葉が貧相。伝わらない。さんぶんのいちどころかじゅうぶんのいちも伝わらない。

あと一回しか見れないという事実がまだ受け入れられない。あんなに輝く戸塚祥太は今しか見れないというのに。仕事してる場合じゃない。もう、ほんとに。

ここから少しネタバレをしていきます。

夏枝をだきしめるシーン。昨日は、なんて微妙な抱き締めかたをするのだろう。と、少しディープ山崎より戸塚祥太な部分が出てしまっているのかと思ってしまった。

バカ野郎だった。「バカは好きですか?私は嫌いです」とディープ山崎に罵られたいぐらいバカ野郎だった。あの抱き締めかたこそディープ山崎だった。あそこで綺麗なこなれた抱き締めかたをしたらそれこそ、なんだやることやってんのかとこれから積み上げるディープ山崎が崩れるのだ。あのちょっと大きくしがみつき、そして項垂れていくあれこそがディープ山崎が夏枝にみせた精一杯だったのだ。なんだ戸塚祥太もっと優しく綺麗な抱きかたしなよ、と思った昨日の自分を殴りたい。

京都の回想シーン。まだ作戦本部を追われる前のディープ山崎はすでに卑怯であった。やはり彼をそうさせたのは白系ロシアの混血という出生がゆえだと確信させるシーンだった。彼がいくら日本を愛そうとも混血の自分がここにいる理由にはそれは不十分だったのだろう。しかし理由など見つからず青い目をした少年は誰にすがるでもなく自分の脳みそだけを信じていたのだ。卑怯であることが自分を守る術だった。そして戦争に関わる今、そんな日本のために踏み切る理由が必要だった。何に対しても理由を求めた彼が出会ってしまったたった一人の女。彼女こそが自分が日本の地に立ち、日本のために脳みそを使うたった一つの理由になるはずだった。しかし理由なくして彼女を求めることがディープ山崎にはできない。ここでも、彼女を愛するためには彼女が自分を愛してるという理由を求めてしまったのだ。それもこれも混血がゆえに彼が苦しみ考えすぎた結果が引き起こした、と私は思った。

ディープ山崎、非常にめんどくさい男である。

理由なんてなくてももっとまわりを見渡せてさえずる小鳥に気付ける性格をしていたらきっと夏枝に対してもっと素直に愛を伝えていたはずだ。しかしそんなディープ山崎を夏枝は好きになるのだろうか。難儀な二人である。

そんな彼がレールを曲げ、私だけのあなたになるとき、夏枝はすべてを受け止められたのだろうか。一瞬の迷いもないディープ山崎の本心はどれだけ眩しかったのだろうか。それが描かれないこの舞台は一体誰の幸せを引き換えに誰が不幸せになったのか考えさせられた。

こんな難しい役をいただいて演じきった戸塚祥太。彼のポテンシャルはまだまだ計り知れないと思った。